キャベツとゴボウのポタージュ/エコロジストのスープ
今日も蜘蛛の巣がはっている。
それをはらって外出するのが習慣になっている。
気になって確認したときは、
いつもはっているのだ。
車のリアガラスのワイパーの付け根のところ。
つい先日までは巣の主のことは知らなかったが、
今はもう知っている。
ワイパーの裏の凹みにある
バネの裏のわずかなスペースに、
小さなマットグレーの蜘蛛が
暮らしていることを。
先日、愛車の車検があって
ディーラーに持っていく前に
いつもより入念に洗車をした。
そのとき、リアガラスの巣の主を
見つけ出そうとワイパーの裏を入念に調べた。
なかなか見つからず、
最終的には懐中電灯まで持ち出して
ようやくバネの狭間にひそむ
犯人と思しき二匹を発見できたのである。
彼らは二匹だから命拾いできた。
一匹狼だったら、ホースの水で
吹き飛ばしていたにちがいない。
助けてあげたのにはもうひとつ。
「今助けたとしても、お前たちの
運命はどうせ車検にもっていくまでだ」
と、思っていたところもある。
愛車が無事に車検をパスして
自宅に戻ってきて数日。
内も外もリフレッシュされた
愛車のリアガラスに新しく蜘蛛の巣がはった。
どうやら、ワイパーの隙間に
蜘蛛がいても、車検は通るようだ。
いずれにしても、彼らのしぶとさは、
僕に親近感を芽生えさせた。
心境が変化すると、
見た目に対する感情も変化して
なんとはなしに、
かわいく思えてくるから不思議だ。
外出するときはいつも一緒。
言ってみれば、僕の旅のパートナーじゃないか。
「コロナが収束したら一緒に旅に出ような」
と、今では毎朝、蜘蛛の巣をはらいながら
ワイパーの住人に心の中で呼びかけている。
さて、そんな蜘蛛すら排除できない僕だから、
当然と言えば当然であるが、
断捨離ができないのである。
いや、正確には断捨離が好きではない
と言った方が正しいかもしれない。
使わなくなったからといって、
壊れたり破れたりしていないものを
ポンポン捨てていくことに抵抗がある。
理屈が云々ではなく、
情緒がmottainaiと叫ぶのである。
自由な解釈を伴って
一人歩きしてはいないか?
というのも、一時的な身の回りの廃棄処分を
断捨離と同義とみなしている節が
世の中にはあると思うからである。
でも、それは単なる片付けにすぎない。
そして真の断捨離を成し遂げられる人は
完全無欠のエコロジストだけじゃないかと
思うのである。
モノを大事に使う習慣がない人が
突発的に断捨離をしたところで、
単に新たな無駄なものを
購買する動機を与えるにすぎない。
エコロジストのバイブル「森の生活」
で知られるヘンリー・ソローは、
ウオールデン湖のほとりに小さな家を建てて
しばらく暮らしていたが、
そこに持ち込んだものは、以下が全てだ。
「ベッド、テーブル、机、椅子、鏡、火箸、
薪のせ台、湯沸かし、鍋、フライパン、
ひしゃく、洗い鉢、ナイフ、フォーク、
数枚の皿、コップ、スプーン、油瓶、
糖蜜瓶、漆塗りランプ」
なにはともあれ断捨離とmottainaiは、
近年もてはやされてきた言葉である。
パッと見、相反しているように思える
2つの言葉。しかし面白いのは、
どちらもエコロジストへの標榜に
帰着していることだ。
とはいえ、これからの世の中に
どちらが正しいという話ではない。
そんな、一見同じ方向を向いているようで
正反対を見据えている人間どうしが、
今日も表向きは平静を装いながら交流し、
互いに反対方向に駆け抜けている。
求められるのはエコロジストの精神
ということはある。無駄のない端正な営み。
それを各々が自分のスタンスで見つけること。
でも、ぐうたら庶民が大上段に構えたら
おっつけ化けの皮がはがれてくる。
だから、まずできることと言ったら、
たとえば、冷蔵庫の肥やしになりがちな野菜を、
いかに無駄なく使い切るかなど、
些細なことの積み重ねを徹底することだ。
そんなことでも少し頭をひねると、
思わぬ発見があるから嬉しい。
僕にとってそんな”嬉しい”のひとつが
「キャベツとゴボウのポタージュ」である。
思わぬ美味しさだったこの一品は、
「野菜の消費に困ったら、
みそ汁かポタージュに使うべし」
という母の教えを忠実に守ったからこそ
偶然作ることができた賜物である。
バターを塗ったバゲッドと一緒に食べれば、
立派なアテにもなるから、
無理して消費する必要のない白ワインを
大量消費してしまうのが
誤算と言えば誤算である。 【H・H】
『 R E C I P E 』
なんか、パイオニアみたいな感じで語っちゃいましたが、ネットで検索してみると実は結構いろんなレシピがあるんです、「キャベツとゴボウのポタージュ」。僕が知らなかっただけで、キャベツとゴボウをスープにしたときの相性の良さは周知の事実だったのかもしれません。いずれにしても、ゴボウはともかくキャベツってついついあまらせてしまう野菜の代表格ですから、「そんなときはポタージュに活用するべし」なのです。作るのも簡単ですしね。ちなみに、料理研究家の浜内千波さんは、キャベツとゴボウをよく炒めてからポタージュにする「焦がしゴボウとキャベツのポタージュ」を紹介していますが、流石に第一線の料理研究家は違いますね。もうネーミングだけで一本取られた感じです。今度作ってみたいなって思いました。ちなみに僕が作ったのは、オーソドックスなポタージュです。キャベツとゴボウがやさしく香るスープで飲み飽きないのが特徴です。
合わせた白ワインは、イル・プーモというイタリアの白ワインです。価格帯は1000円前後のデイリーワインです。ブドウ種はソーヴィニヨン・ブラン(50%)とマルヴァージーア・ビアンカ(50%)。ソーヴィニヨン・ブランらしい柑橘とハーブの香り。飲み口はフレッシュな辛口でミネラル感が豊かです。軽快な味わいのため、今回のようなやさしい味わいのスープや前菜とも合わせやすいですし、魚料理との相性もいいと思います。
用意するもの キャベツ1/8個 ゴボウ1/3個 牛乳200㏄ 水600㏄ コンソメキューブ2個 パセリ(みじん切り)適量 塩コショウ適量
① 乱切りしたキャベツとゴボウを中火で10分煮る。
きゃべつとゴボウはあらかじめ鍋で煮やすいサイズに乱切りします。その後、600㏄のお湯で10分煮ます。
② 火を止めて荒熱がとれたら、鍋の中身をブレンダーでスープ状に攪拌します。
鍋の形状などでブレンダーでは中身が飛び散りそうな場合は、荒熱がとれたところでミキサーで攪拌してスープ状にしてください。
③ 再び弱火に火をつけて、牛乳とコンソメを加え混ぜ合わせ、塩コショウで味を整えます。
塩コショウで味が決まったら盛り付けして完成です。もしあれば最後にパセリのみじん切りを散らしましょう。