ツナアボカド/異郷と天国
サテライトタワーは、メキシコシティの
郊外にある色鮮やかなモニュメントである。
メキシコを代表する建築家
ルイス・バラガンの代表作。
簡素な塔の集合体は、計算された
配置と配色で見る角度によって表情が
まったく違うのが面白い。
僕が訪れたのは十年以上前だったが、
その存在感にすっかり魅了されてしまった。
「青、赤、赤錆、薄紫、黄土、黄、白、ピンク」
という、『色彩のマエストロ』バラガンが愛した
8つの色の中で、とりわけ僕が惹かれるのは、
青と赤錆色のコントラストだ。
藤枝のとある温泉宿を訪れたときのこと。
文化財にもなっている重厚な日本家屋の壁が、
青と赤錆色に着色された漆喰で
塗り分けられた空間があって、これには驚いた。
思わぬところで見つけたメキシコのエッセンス。
僕にとってメキシコが
ロマンチックな異郷としてあるのは、
そんな、予期なく遭遇する
鮮やかな配色のsomethingに、
バラガンの愛した配色を
照らし合わせるからかもしれない。
我が家の食卓に、はじめてアボカドが 「ワサビ醤油で食べればトロの味なんだって」 あれから30余年。
どれもロマンチックというわけではない。
たとえば、昭和50年代。
アボカドにまつわる家庭の食卓はカオスだった。
あがった日のことをよく覚えている。
ファーストコンタクトは刺身としてだった。
5ミリほどの厚さに切られたアボカドが、
マグロの刺身よろしく
刺身皿に盛られていたのである。
傍らにはご丁寧にワサビまで
添えられているのだから、
これはもう、まごうことなき刺身として
アボカドの御出座しなのである。
井戸端会議で仕入れた情報であろう母の一言に
怪訝そうな顔をした父の表情が忘れられない。
そしてその日以降、わが家では
しばらく食卓にアボカドが
上がることがなかったのは言うまでもない。
アボカドは、とくに珍しい食材ではなくなった。
食べ方もこなれて多様になった。
でも僕はというと、最初に醤油で食べた経験を
ひきずって、和の味付けが好みである。
「アボカドがはじめて食卓に出てきた時代は、 楽しい思い出は、
その日は父しかいなく、僕が夕飯を
作ることになったが、
冷蔵庫をあさっていると、アボカドがひとつ。
それを、ごま油と麺つゆとツナで
適当に和えて出したら、日本酒のアテに最高で
思わず二人で吞みすぎてしまった。
酔った勢いで夜半までバカ話で
盛り上がったことを、
ついこないだの出来事のように思いだす。
そんな父も、亡くなって3年が経つ。
ドリフが全盛期で、父とよく観て
馬鹿笑いしたっけな」
志村けんさんの訃報のニュースを見ながら思う。
いつか全て切ない思い出に変わる。
そんなことはわかっている。
くだんのアボカドのアテを作って吞み始めたが、
今日はいくら吞んでも、ロマンチックから
リアリスティックに引き戻される。
”ひとつの時代の終わり”の始まりがきたようで
胸騒ぎがする。どうにも落ち着かなくて
色のない天国を脳内に描き
8つの色に塗り分ける。
【H・H】
『 R E C I P E 』
食材を切って和えるだけなので料理を作らないオジサンでも手早く簡単に作ることができます。もし、あなたが仕事で打ちのめされてカラータイマーが赤点滅してても、残りの余力でつくることができるでしょう。彩りも考えてプチトマトを加えましたが、無くても問題ありません。
ちなみに、調味料を変えるだけで和にも洋にもアレンジが可能なので、吞みたい酒によって作り分けましょう。ごま油と麺つゆで辛口の日本酒に、オリーブオイルとレモンと塩で白ワインのアテに最適です。
今回は、ごま油とめんつゆで作りました。お酒は、志太泉のふくよかな旨味がありながらすっきりとした飲み口で料理の邪魔をしない志太泉の純米酒を常温で合わせました。
用意するもの アボカド1個 プチトマト120グラム ツナ缶1個 レモン果汁小さじ2 合わせ調味料(ごま油大さじ1 麺つゆ濃縮タイプ小さじ2) コショウ適量
①アボカドをひと口サイズにカットしてそこにレモン果汁を加えます
アボカドは後に和えるプチトマトの大きさを見ながらちょうどよいバランスでカットしましょう。カットしたらレモン果汁を加えます。果汁がアボカドに満遍なく行き届くように軽く混ぜます。
②プチトマトを4分の1の大きさにカットし①に加えます
トマトは櫛型にカットします。その後①に加えます。
③①に油を切ったツナを加えたら、合わせ調味料を加えてよく和えます
合わせ調味料が全体にいきわたるまで和えたら、お好みでコショウを加えれば完成です。
いつもお洒落な料理をありがとうございます(*^^*)
昭和50年代にアボカドとは、恐れ入りました。お母様、凄い👏
うちもマグロの味がするんだって〜!が、最初だったかと…(笑)
今度、乾燥人参を作ろうと思っていますが、何か良さそうなレシピあったら、アップしてもらえると嬉しいなぁ。
このブログの初コメントです。ありがとうございます。
乾燥人参って使ったことどころか食べたことすらないですが、ちょっとどんなものか興味あります。