新玉葱とトマトのなまり節サラダ/愛すべき男の料理
男の料理は、少々厚かましい。
それが相場である。
そしてその厚顔無恥の波に
巻き込こまれるのは、
ご家庭の奥さんであり、同棲中の彼女である。
これも相場なのである。
荒波はなんの前触れもなく女の前にやってくる。
なぜなら、料理は日常のはずが、
男が作ることでサプライズに変わるからだ。
そしてこのサプライズを、
男は女に対する優しさと信じている。
だから日曜の朝、
コーヒーを飲みながら唐突に
「今日は俺がごはんを作るよ」
などとのたまう男の台詞は、
例外なくスイートな口調である。
理屈ではない。これが男の料理なのである。
そして、男が一度料理を作ると決めたとき、
それにかける情熱は目を見張るものがある。
もちろん自己研鑽も惜しまない。
だから、自分からハードルを
上げることだって厭わない。
そんな言葉を残し、買い出しに出かけると、 疑問を持ってはいけない。 そして、男が料理において抱く
そこで買うのは、鯛や和牛などの高級品に、
今後あまり出番の無さそうな調味料。
それを、何のためらいもなく
買い物かごに入れていく。
普段、冷蔵庫のものが無駄にならないように
やりくりしながら献立を考えている
女の努力など、どこ吹く風なのである。
帰宅後、レジ袋の中身をみた
女の表情がひきつっている。
もちろん、男はそんなことに気が付かない‥‥
繰り返すが、これが男の料理なのである。
手間ひまは裏切らないという、
「手間ひま信仰」への信仰心はあつい。
だから、一度料理を作りはじめた男に、
昼飯、晩飯の概念はない。
納得できる仕上がりの時こそが、
メシの時間なのである。
そして、昼飯でも晩飯でもない時間に、
渾身の煮込み料理なんかが完成するわけだが、
そのころになると女の怒りと空腹のピークは
とうに過ぎ去っている。
もうかなり前の、ちょうど桜が咲くこの季節。 「旬のもので一品お作りなさい。 たしかに、その一品が加わるだけで、 でも旬もコストも考えない、
そしてそれとは不相応な、
まったりと気の抜けた空気が流れるリビング。
これはもはや、どこにでもある
幸せな日本の家庭における
”男の料理”という儀式であり、
美しい日本の象徴なのである
(あんまり本気にとらえないでくださいね)
古希を過ぎた料理研究家の女性に
自炊をする僕の晩ごはん事情を聞かれた時の
アドバイスが心に残っている。
それだけで違いますよ。
今だったら新玉葱をスライス
するだけでいいのですから」
男の料理に存在する自己主張が和らいで、
随分とこなれて見えてくるから不思議である。
男の料理って潔くていいよね。
あれから大好きになった新玉葱を日本酒のアテに
和牛の塊肉に思いを馳せる。 【H・H】
『 R E C I P E 』
以前に紹介したなまり節サラダの別バージョンです。材料が違うだけで作り方もほとんど変わりません。春の旬の新玉葱と前菜として、また、待たせている奥さんにつなぎの一品としていかがでしょうか?
健康促進という本当に自分都合で、えごまオイルを加えましたが、無くても大丈夫です。代わりにごま油やオリーブオイルを加えても、また違う味わいで楽しめます。
お酒は、ほのかに酸味のあるすっきりとした日本酒との相性がいいと思います。今回はぬる燗にするとやさしい甘みと酸味を感じることができる僕のお気に入りの酒蔵のひとつ高砂酒造の山廃純米吟醸と合わせました。
用意するもの 新玉葱 半玉 プチトマト120グラム なまり節1/2 A(マヨネーズ20グラム レモン果汁小さじ1 白だし10グラム えごま油小さじ2) 塩こしょう
① 新玉葱を薄切りに、プチトマトを1/4の大きさにカットする
新玉葱は繊維に対して直角に薄切りにしてサッと水にさらします。プチトマトは櫛型に1/4の大きさにカットします。
② なまり節をカットする。
なまり節はおよそ2ミリくらいの厚さにカットします。
③ ①と②をボールに入れてAを混ぜ合わせたものとそこに投入する。
Aで合わせ調味料を作ったら①と②を入れたボールに投入して食材に満遍なくからむように、よく混ぜ合わせます。最後にコショウを少々ふります。塩味が足りなければ塩も加えてください。