苺のグラニテ/まじないでコロナ退治
知っているようで知らないことというのは、
誰にでも必ずある。
「一挙手はひょいと手をあげること、
一投足はポンと足を投げ出すこと」(*)
これは、金子光晴さんのエッセイ
「一挙手一投足」の冒頭の一節である。
僕は、それまで一挙手一投足について、
細かい動作や行動のことという
言葉の意味は知っていた。
しかし前提として、そんな簡単な動作から
来ていることを、最近になるまで
気にもとめていなかった。
簡単な動作。
すなわち一挙手一投足のもう一つの意味は、
「少しだけ努力すること」である。
ちなみに、この金子光晴さんのエッセイは、
老いて自由が効かなくなり、
自分にとって一挙手一投足の動作は
もはや少しの努力でできるものではないことを、
具体的なエピソードを挙げて嘆いている。
切ない内容とは裏腹に、
彼のパンクな生き様が行間に滲み出ていて、
鬱々とした日々のささやかな活力になった。
とはいえ、いまは自粛、自粛、自粛である。
そして一人ひとりの一挙手一投足が大切である。
そこで僭越ながら個人でできる
ウイルス撃退のための一挙手一投足を
ここで紹介しようと思う。
ちなみに、これは明日限定のものである。
明日4月8日は、虫除けのおまじないをする日。
これは、いま頃の季節から出てくる
虫の排除を願ってまじないの文句を書いた紙を
柱やトイレに貼り付ける、古い日本の風習だ。
そして今年は『虫除け』を『ウイルス除け』に
変換させてもらおうという魂胆である。
普段はやってもいないのに、
都合のいいときばかりで恐縮ではあるが、
ここは日本のおまじないの力にかけてみたい。
本当のおまじないは甘茶ですった墨で書くが、
時代が時代だけに略式で。今回だけは、
ペンでOKということにさせてもらおう。
すなわち、「髪さげ虫」のところを
「コロナウイルス」に変換したまじないの文句を
紙にペンで書いて柱に貼ればいいだけなのだ。
どうだろう。誰でもできそうな 苺狩りの農家をやっている親族から 明日は、忙しくなりそうだ。
コロナウイルスを成敗ぞする」
ウイルス対策ではないだろうか。
しかも、やる人が増えれば増えるほど
効果がありそうな気がする。
そんな僕は、救いようのない楽天主義だろうか。
大量の苺をいただいた。
コロナで客足が伸びず、
腐る前にということだった。
酒好きファーマーからの思わぬギフトである。
木箱に大量の苺を眺めていたら、
ふと、いただいた苺でグラニテを仕込んで、
それと一緒にお返しとして発砲ワインを
持っていくことを思いついた。
おまじないをして。お酒を届けて。
そうそう、おまじないのほかに、
神頼みも忘れてはいけないな。
なんて言ったって4月8日は、
お釈迦さまの誕生日でもあるのだ。
でもその前に、まずは今晩、
グラニテと発砲ワインの
相性を確かめることが先決だ。 【H・H】
(*)
「一挙手はひょいと手をあげること、一投足はポンと足を投げ出すこと」
引用元:『人よ、寛かなれ』 金子光晴 2003年 中公文庫 P57[/vertical]
『 R E C I P E 』
グラニテというと気取って聞こえるかもしれませんが、要するに大人味のシャーベットです。甘さはひかえめで、生姜がアクセントになっているので、辛口のシャンパンやスパークリングワインと合わせて美味しくいただけます。今回はシャリシャリ感を出したいため、水分調整でリンゴの100%ジュースを加えました。ちなみに、夏は同じ要領でスイカで作っても美味しいグラニテになります。
少々お行儀が悪いかもしれませんが、グラニテの器にスパークリングワインを注いで一緒にいただくのも、僕は気に入ってます。
今回合わせたお酒は、サンテロ・ブラック・ブリュットという1000円以下で買えるイタリアのスパークリングワインですが、辛口でキレがあり泡立ちが力強いので大人味のグラニテとの相性もよかったです。
用意するもの 苺300グラム レモン果汁1/2個分 生姜すりおろし一かけ分 100%リンゴジュース80グラム 砂糖大さじ1
① 苺のヘタの部分をカットしてミキサーでジュース状にする。
ジュース状になったら、一度ザルで濾しことをおすすめします。
② ①にレモン果汁、すりおろし生姜、リンゴジュース、砂糖を入れてかき混ぜる
かき混ぜて甘味をみながら、足りなければ好みで砂糖を調整してください。
③ ②をタッパーに移したら冷凍庫に入れて30分おきにスプーンでかき混ぜる
かたまり始めたら、インターバルを短めにかき混ぜてシャーベット状になるまで固まったら出来上がりです。